2014年12月16日

石川選手、卓球ワールドツアーグランドファイナル優勝・・・・おめでとう

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 卓球の石川佳純選手が、卓球のワールドツアー・グランドファイナルの女子シングルスで日本勢として初優勝。強豪の中国勢は出ていなかったとはいえ快挙である。

 講演会や講習会で、よく石川選手の身体操作に関しては紹介させていただいていた。上はそのスライドである。理由は、日本の女子卓球選手の中で唯一「沈み込み抜重」がつかえる選手だからだ。「抜重」というのは両足を床(地面)から離してカラダを浮かせること。「抜重」することによって、腕が素早く、もしくは巧みに動くのだ。多くの競技で「抜重」を使っている。剣道の跳躍素振りも「抜重」によって竹刀を早く振る稽古である。

 「抜重」には「立ち上がり抜重」「沈み込み抜重」がある。「立ち上がり抜重」は卓球に限らず多くのプレーヤーが無意識に利用しているが、「沈み込み抜重」を使える選手は少ない。その中で、石川選手は「沈み込み抜重」を利用している。

 「立ち上がり抜重」は予備動作が大きいのに対して、「沈み込み抜重」は予備動作がない。そのために相手が反応できないことが多い。
 「抜重」という観点でいうと、「立ち合上がり抜重」はスポーツ技術に多く見られ、「沈み込み抜重」は武道(武術)で多くみられる。そして「沈み込み抜重」ほぼ静止状態から生み出される。よって、スポーツの動きと違って、武道(武術)は「静」に特性がある。

2014年11月22日

身体動作講習・・・

 約2年間、陸上部の学生と身体動作研究会を開催してきました。約2〜3週間に一度の割合。そのくらいの頻度でも、身体操作の感覚は全く変わってしまいます。

 彼自身も、自己ベストを更新することができました。卒業を控えて「身体動作法の教え方を学びたい・・・」ということで、引き続き講習会を開催。剣道部の学生を相手に歩行を指導。

 途中から私が打突動作と歩行を協調させる講習を・・・・。このタイミングで竹刀を振り上げることが「伝統的打突」⇒「常歩剣道」へと移行します。この左足への荷重で振り上げ動作が発現することは剣道の基本であったのです。しかし、現代では、ほぼ逆のタイミングで竹刀を振り上げる剣士がほとんど。

 実際に指導するときには、歩行と打突動作の関係を指導する必要はありません。剣道の稽古で右荷重と左荷重のタイミングを教えるだけでいいのです。そのタイミングを教えると剣道は劇的に変わっていきます。左のかかとは下がり「ひかがみ」が伸びてきます。左のこぶしは正中線から外れなくなっていきます。

2014年10月16日

左荷重

yodaike1.jpg 「常歩(なみあし)」の大きな着眼点に左右がある。元々、カラダの左右特性の研究から「常歩(なみあし」ははじまった。

 剣道に伝わる教えに、「ひかがみ(膝のうら)を張れ」「左足の踵を下げよ(接床させるのではない)」などがある。

 しかしながら、現代の剣士(特に若い剣士)は、そのような教えとは逆の動作をしている。左のひかがみが緩み、左踵が上がっている。

 その原因を探っていくと歩行形態に行きつく。現代人の歩きを基礎として、剣道をすると、左のひかがみが緩み左踵が上がるのだ。これは、言いかえると、右足に荷重していることを意味している。

 しかし、このように右荷重の現代的な剣道をしている若い剣士に、左荷重の打ち方をしてもらうと、短期間に剣道が変わっていく。左のひかがみが張られ、左踵が下がってくる。

 剣士によっては

「先生、左踵を床につけてもいいですか・・・」

と尋ねてくるものもいる。左踵を接床させることは現代剣道では基本とされていないので、「左踵はつけないように」」と若い剣士には指導している。しかし、この剣道で左膝の抜きを覚えれば、はるかに左踵を接床させた方が打ちやすいはずだ。

 この左荷重の剣道は、左に荷重するタイミングを教えることで上達するようだ。振り上げ時とその直前に左に荷重することが大切。そのための基本打突と構えを教えると短期間で左の剣道になっていく。

 そして、驚いたことに「相手の打突に対して引く」「左拳を頭上にかかげる」「引き技を多用する」というような、現代剣道の特徴的な動作が影をひそめていく。

 さらに、この左荷重の剣道を発展させると、左足踏込の技ができるようになる。常歩(なみあし)剣道は、やはり伝統的歩行法を基礎としていることが明らかになった。

 


2014年07月10日

ワールドカップブラジル大会にみられる身体動作法

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 ワールドカップブラジル大会も、ドイツとアルゼンチンの決勝を残すのみとなった。サッカーの解説等はチームの戦術に言及しているものがほとんどだが、研究会では個々のプレーヤーの身体動作法にも目を向けている。

 今大会では、小田伸午先生(関西大学人間健康学部教授)のスタープレーヤーの身体的および動作特性に着目した記事が産経新聞に掲載された。小田教授が注目したのは、ドログバ(コートジボアール)の「水平感覚」ネイマール(ブラジル)の「忍びの術」メッシ(アルゼンチン)の「すり足走法」エジル(ドイツ)の「観の目」である。

 これらの身体動作法は、実は日本の武術などが保持していた「技」である。ブラジルの大敗によって、個々の資質よりもヨーロッパ型の戦術を重要視したサッカーが注目されそうな気配だが、それらを支えるのは個々の身体動作であることには変わりがない。

 スポーツなどの客観化された動作を「技術」という。それらが個々のプレーヤーに身についたものが「技能」。そして、さらに卓越された誰にも真似できない「技能」を「技」という。高いレベルの戦術は、この「技」の集合体である。世界のトップに近づくには、個々の「技」を洗練させることが不可欠である。

 それぞれの写真をクリックすると記事(産経新聞)がご覧いただけます。

2014年06月26日

絶対水平感覚

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 日本のワールドカップブラジル大会(2014)は、予選4位という残念な結果で幕を閉じた。  

 第1戦のコートジボワール戦、本田選手の痛快なシュートで先制したが英雄ドログバの投入によって流れはコートジボワールへ。立て続けに2点を献上して逆転負け。    

 翌日、元Jリーガーの知人と電話で話をする機会があった。 話題はコートジボワール戦に・・。  

  日本人は雨が苦手なんです。外国人選手、特にアフリカ系選手は芝がぬれていても、まったく滑らない・・・・」    

 雨天であったことも敗因の一つだったらしい。はたして、それほどまで違う「バランス感覚」とは何か。

 当研究会では、以前より「水平感覚」に注目している。「水平感覚」とは、身体が傾いても身体のイメージは水平を維持する感覚のことだ。  

 どんな困難な体勢でも「水平感覚」を保つ能力(感覚)を、私たちは「絶対水平感覚」と呼んでいる。日本人選手と彼らの違いは、この「絶対水平感覚」の有無によると考えられるのだ。

 この「水平感覚」を保持する身体的条件は頭部の保ち方にある。左右の目が水平ラインを崩さないこと。つまり、頭部を垂直に保ち続けることである。  

 よって、研究会では10年ほど前までは「垂直感覚」と名づけていた。しかし、その後「水平感覚」と呼ぶようになった。  

 そして、この「水平感覚」を身につけるには体幹をある状態に保つ必要がある。現在、盛んにおこなわれている体幹を鍛える「コア・トレーニング」。しかし、体幹を固めて強化するだけでは、逆に「水平感覚」から遠ざかる可能性があるのだ。  

 研究会では、次のワールドカップ、および東京オリンピックに向けて水平感覚」を含めたフィジカルリテラシーのプログラム開発に着手する話が進んでいる。

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2014年04月17日

集団行動と動作について

集団l訓練.jpg  集団の規律形成、連帯感や達成感の体験などを目的に、集団(行動)訓練を実施している団体は多いと思います。

  現代人のほとんどが、股関節・膝関節・足関節を伸展方向にアクセントがある「伸展動作(感覚)」による動きを得意としています。逆に「屈曲動作(感覚)」による動きは、それらの関節を屈曲方向に操作させます。「屈曲動作(感覚)」によって「内力」以外の「力」を用いた動きが発現すると考えられます。

 前近代の日本人は「屈曲動作」が得意であったと考えられます。先日、集団訓練を見ていたのですが、集団で動作を合わせるときには号令をかけます。その号令に動作を合わせるときに、関節が伸展する局面で合わせる傾向にあります。日本語を話していると強拍が得意になるので、さらに伸展にアクセントが来るように思えます。

 「伸展動作(感覚)」が主流になった主因は、明治以降の学校教育全般や体育による集団的動作かもしれません。服装や履物は、副次的な原因かもしれません。剣道なども、大勢で素振りを合わせるなどのことをやりだしてから本質から離れたのかもしれません。

 明治期初期に日本人が行進ができなかったのは、歩様やリズムの問題だけでなく「屈曲」にアクセントがある動作をしていたからとも考えられそうです。

2014年04月07日

暴力がなかった時代の運動文化を取り戻せ

暴力スキージャーナル

 先日、「勝利至上主義の功罪を問う」(毎日新聞)の記事を掲載しましたが、スキージャーナル社より剣道(武道)と暴力的指導についての取材を受けました。本来、武道が持つ文化性を取り戻すことが一つの解決法であると考えています。(記事全文のダウンロードは上記画像をクリックしてください)

2014年01月10日

人はなぜ歩くときに腕を振るのか?

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 すこし古いですが、興味深い記事を発見しました。

 

【2009年7月29日 AFP】

 人はなぜ歩くときに腕を振るのか。科学者らを長年悩ませてきたこの疑問を解いたとする論文が、29日発行の「英国王立協会紀要(生命科学版、Proceedings of The Royal Society B)」に発表された。

 腕を振るには筋肉が必要であり、筋肉に食物エネルギーを供給する必要もある。それならばなぜ、歩くときにわざわざ腕を振るのか。「大昔に四足歩行をしていたときの名残だ」と説明する専門家もいる。

 今回、米国とオランダの3人の科学者は、人体を使った厳密な実験を行って謎の解明を試みた。

 チームはまず、腕振りにおける力と動きを検証するための力学モデルを構築し、10人の被験者に対して3種類の歩き方

「腕を普通に振る」

「腕と足を同期させる(右足を踏み出すときに右腕を前に振る)」

「腕は組むか体側にぴったり付ける」

 をしてもらい、代謝コストを測定した。代謝コストは被験者が呼吸によって消費する酸素とはき出す二酸化炭素から算出した。

 実験の結果、腕振りはマイナスよりもプラスに働いていることがわかった。

 たとえば、腕を振らないで歩く場合、肩の筋肉にわずかな回転・ひねりを加える必要が生じ、代謝エネルギーは腕を振る場合に比べて12%余計に必要となった。

 また、腕振りは、下肢筋肉のエネルギーの浪費につながる体の上下運動を抑制する働きがあることもわかった。腕を振らない場合、この上下方向の動きは63%も上昇した。

 腕と足を同期させる場合は、肩の筋肉を動かすエネルギー・コストは低減されるものの、代謝率は25%ほど跳ね上がった。

 研究を主導した米ミシガン大学(University of Michigan)のスティーブン・コリンズ(Steven Collins)氏は、

「腕振りは四足歩行の名残りと言うよりは、エネルギーを効率よく使って歩行するために不可欠な方法だ」

と話している。

2013年12月24日

「動作原理」という考え方

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 拙書『日本刀を超えて〜「身体」と「竹刀」から考える剣道論〜』で考察したことの一つに「動作原理」があります。一般的に、私たちが動作も含めた「身体性」を考えるときに「身体特性」「動作特性」を考察します。「身体特性」とはその主体(人)の「からだ」であり、「動作特性」とはその主体が獲得した「技能」ともとらえることができます

 ですから、高いパフォーマンスを獲得するために体力トレーニング等によって必要な「身体特性」を獲得したり、スキルのトレーニングによって「動作特性」を習得します。

 しかし、武道(武術)の技の修得過程には「身体特性」「動作特性」の間に、それらを結びつける触媒的役割を果たすものがあります。それらを「動作原理」ということにしました。日常「姿勢」「歩行形態」また武術「型」などが「動作原理」にあたります。スポーツでは、一般に「動作原理」は独立しておらず「身体特性」「動作特性」に包含されています。

 優れた「動作特性」は、それを支える「身体特性」「動作原理」によって発現すると考えられるのです。そして、武道(武術)における「動作原理」は、それらを獲得することによって「身体特性」「動作特性」を高めることができるのです。 「姿勢」「歩行形態」「型」を修得する過程において、それらを支える「身体特性」「動作特性」が獲得されると考えれます。つまり、スポーツでは取り上げられることがない「動作原理」の獲得が武道(武術)の修行では中心的課題になっているのです。そして、この「動作原理」はスポーツにおいても機能すると思われます。

2013年09月17日

立食パーティーにおける水の入ったグラスの保持は立位姿勢の動揺を小さくする

九体(大下).jpg 先日(2013年9月13日〜15日)、九州共立大学で開催されました「九州体育・スポーツ学会」において、大下和茂先生(筆頭発表者)・山口恭平先生(共に九州共立大学スポーツ学部)とともに「立食パーティーにおける水の入ったグラスの保持は立位姿勢の動揺を小さくする」のタイトルで発表を行いました。

 この実験は、3月の卒業謝恩パーティーの際に、大下先生との「なぜヒトは立って呑むのか・・・」という雑談から始まりました。その後、大下先生が学生を被験者として実験を行いました。対象者は女子学生37名。対象者は閉眼状態(目隠しをした状態)で20秒間の右足立ちを3分の休憩をはさんで2回行いました。2回目について、21名は(COM群)は同様の片足立ちを行い、16名(WA群)は180mlの水が入った250ml容量のグラスを左手で保持して片足立ちを行いました。各20秒間の中間10秒間の足圧中心点の平均動揺速度(COP-V)を算出しました。

 その結果、CON群においては有意な差が認められませんでした(平均9.78p/s・平均10.06p/s)が、WA群では、グラスを保持することで有意にCOP-Vがの低下が認められました(平均9.93p/s・平均8.80p/s,P=0.01)。

 この結果は、身体動揺がグラスを保持した手指から知覚され、COP-Vが小さくなった可能性を示しており、ヒトのバランス感覚の向上に応用できる可能性を示しています。例えば、高齢者が歩行時に杖を使用することも、杖により地面に支点をつくり安定をはかるだけでなく、杖を保持すること自体に姿勢を安定させる機能があるのかもしれません。

 今回の発表により、大下和茂先生は「若手優秀発表賞」を受賞されました。おめでとうございました。

一本歯(後歯)下駄
五動 新体操操作術
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