「一本」とは何か

スポーツ学概論(1年生対象)の講義で「一本」の意味について取り上げました。
まず、「サムライスピリット(柔道編)」というDVDを鑑賞させます。これは、極真空手前ヨーロッパチャンピオンのニコラスぺタス氏が、日本の武道を紹介していくシリーズでヨーロッパで放映されたあと、日本でも放映されました。
その中では「一本」とは相手の命を奪うくらいに強烈な技・・ということが語られています。しかし、本来の「一本」 の意味はすこし違うようです。
「一撃必殺」という言葉があります。これは、「一本をとる」という考え方をより具体的に表しているようです。一撃で必ず殺す、つまり相手の命を奪うとしているのです。一撃で相手を殺すというのは、世界中の狩猟民族がほぼ共通に持っている考え方です。
これは、決して自分の技術の高さを証明しようとしているのではありません。獲物に対する尊敬の念から生じています。大切な「命」を奪うときに、一撃でしとめ、余計な苦しみを与えないことが最低限の「礼儀」であるという考え方です。
この「一撃必殺」の精神こそ「一本」の源であると考えられます。この考え方が、武道など相手を殺傷することから昇華した運動文化に受け継がれたと考えられます。よって、柔道・剣道・空手などでは、「一本」や「一振り」・「一撃」で相手を倒すことが高いレベルの技術であるとされているのです。