2018年05月02日

 近年、さまざまな「身体操作法」や「技法」が伝えられたり紹介されたりしています。当研究所が提唱している動作法もその一つですが、目指しているのはどれも「合理的に動く」ということです

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  さて、「合理的に動く」とはどのような動きなのでしょうか。整理してみましょう。 

【伸展動作と屈曲動作】 

 まず、実際に動いてみましょう。自然に立ってください。1メートルくらい前方の地面(床)にラインを引きます(目印を決めてもけっこうです)。左右どちらの足を踏み出してもかまいません。一歩でそのライン(目印)まで体を運んでください。さて、皆さんはどのように体を運ぶでしょうか。

 最初は1メートル先まで跳んでみましょう。左右どちらかの足で地面(床)を蹴って前進します。跳びあがるようにして動きます。次は、立ったまま前に倒れてみましょう。そのときに両足の踵(かかと)を上げないでください。踵(かかと)を接地したまま前に倒れていきます。そして、これ以上前傾ができないところまで倒れたら、どちらかの足を前に踏み出してください。これら二つの方法を試していかがでしたでしょうか。何が違うのでしょうか。

 跳び上がる方法は主に「筋力」を使っています。「筋力」を「内力」ともいいます。からだの内側から発揮される力という意味です。一方、からだを前傾させる方法は「内力」よりも「外力(重力)」を使っています。全く異なる感覚であると思います。

 「合理的身体操作」とは、このように可能な限り「外力」を使用する動きのことをいいます。しかし、ここで紹介したからだを前傾させる方法は、「外力」を使う最も初歩的なものです。動きを知る導入方法と理解してください。

 上の二つの動き方について、もう一度「膝の動き」に着目してみていきましょう。「内力(筋力)」をつかう前進は、曲げた膝を伸ばしながら動き出しています。一方、「外力(重力)」をつかう方法は膝を曲げながら動き出しています。初動(動作のはじまり)において、膝が逆の動きをしています。当研究所では、膝を伸ばしながら動く方法を「伸展動作」、膝を曲げながら動く方法を「屈曲動作」といっています。いうまでもなく、当研究所がお教えする動作法は可能な限り「外力」を利用することができる「屈曲動作」です。

 実は「屈曲動作」は、日本の伝統的身体操作法の基礎となる動き方です。是非、「屈曲動作」を学んで飛躍してください。

2018年05月01日

身体の断絶

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 合理的身体操作には様々な方法があります。当研究所が提唱している「屈曲動作」だけがその方法ではありません。「屈曲動作」・「なみあし」はその中の一つだと理解してください。

 さて、膝関節などを屈曲させる「屈曲動作」は本来、明治維新以前(前近代)の日本人が得意とした動作法だったと考えられます。なぜ、日本人が得意だった「屈曲動作」が消失していったのでしょうか。それを説明しるときによく言われるのが「身体の断絶」です。

 日本の身体運動文化には2度の断絶がありました。一度目は明治維新、2度目は先の敗戦です。「屈曲動作」の消失は明治維新による断絶が大きく影響しています。

 明治維新による日本人の「身体性」の断絶は大きく二つの要因がありあります。一つは、生活習慣の変化にともなうものであり、もう一つは明治政府の政策によるものです。

 和服から洋服へ、伝統的履物から靴(シューズ)の変化などの日常動作の変容は緩やかであったと考えられます。一方、政策による断絶は日本人の身体に急激な変化をもたらしました。

 明治政府は徴兵令を公布し多数の農民からなる軍隊を構成することとしました。。しかし、この徴兵令による国民皆兵化には大きな障壁がありました。それは、当時、国民の大部分をしめた農民には集団移動能力が欠如していたのです。つまり、行進ができなかったのです。

 そこで、学校体育の中で行進を徹底的に訓練しました、義務教育過程に兵式体操を採用しましたが、その内容は本来のものとは異なり、隊列をととのえての歩行が中心でした。さらに、同様の施策が音楽教育にもみられました。行進ができない原因の一つが、それまでの日本にマーチ(行進曲)のリズムが欠如していることに気づいた政府は、「文部省唱歌」をつくり、マーチの音楽に合わせて歩くことを訓練させました。

 さて、足なみをそろえて行進ができるとはどういうことでしょうか。地面を踏みしめるタイミングを一致させる必要があります。すると、着地脚の膝や足関節(足首の関節)を伸展させるアクセント(感覚)が強くなってきます。

 徐々に日本人は、本来の動作法を失い、膝関節や足関節(足首の関節)を伸ばすことのよって動く「伸展動作」が主流になっていきました。

 本来日本人の身体性と合致していた動作法の中に現代の日常生活やスポーツ技術に応用できる動作法があるのです。当研究所では、それらを抽出しその習得法を伝授しています。

2009年05月22日

 動きの3要素を学んだところで、主観客観について触れることにします。

 私たちが動きを学んだり身につけたりするときには、上手な人の動きを真似たり、ビデオを撮ったりします。そして、自分のフォームをつくります。

 しかし、なかなか上手くいかないことも多いようです。自分で理想のフォームを描いていても、そのようには動くことができません。

 その原因のひとつは、主観客観のズレがあるからです。

 例えば、ターンオーバーする走りを目指すとします。ターンオーバーとは走動作において離地した脚が鋭く前方に切り返されることを言います。(「ターンオーバーと二直線走法」参照) 

 すばらしいターンオーバーの走りをする選手やそのデータを参考に、意識的に脚を前に切り返そうとしたり、膝を前方へ振り上げようとしても上手くいきません。

 それは、実際の動き(客観)とそれを生み出す感覚(主観)が異なるからです。

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 カール・ルイス選手(1990年代に活躍した陸上選手・オリンピックで通算9個の金メダルを獲得)のコーチであったトム・テレツ氏は、ターンオーバーを生み出す感覚は「足を真下に踏みつけることだ」と語ったといいます。

 客観的な動きとは、全く異なる主観(感覚)で、ターンオーバーを生み出していたのです。

 また、私たちは様々な動作の教えを「ことば」として受け取ります。しかし、その「ことば」が客観としての「ことば」か、主観としての「ことば」かを明確に把握しないと誤った姿勢や動作を覚えることになります。

 スポーツや武道の指導現場では、これらが混在しているのです。

 さらにやっかいなのは、主観は個人によって異なるということです。

 トレーニングや稽古のなかで、独自の感覚(主観)をみつけることも楽しいことです。

 また、個人の感覚も時間の経過とともに変化していきます。1年前の主観(感覚)と現在の主観は違います。常に、現在の新しい感覚を探すことも大切です。 

2009年05月21日

 二軸動作・常歩感覚を大切にしています。なぜでしょうか?。

 動作を勉強したり、習得したりするときには感覚を抜きにできません。

 動作を観たり、自分でつくったりするときの3要素があります。この3つの要素のどれが欠けてもいけません。

 その3要素とは、動き・力の方向・感覚です。簡単に説明しましょう。

 動きとは、客観的に現れる動作です。しかし、動きをみるときに注意しなければならないのは、実際(客観)に動いている方向と力の方向(からだに力がかかる方向)は異なっている場合があるということです。

 例えば、腕をできるだけ速く、頭上に上げて下げて(元に戻して)ください。 腕が頭上にあがっていく途中にすでに腕を下げる方向の力が加わっています。

 また、そのときの感覚を感じてみてください。人によって異なりますが、動き力の方向とは異なる感覚(感じ方)があるのです。

 動き見えますが、力の方向感覚は見ることができません。

 しかし、これらの不可視的な要素に気づくことで、動作を観たりつくったりすることができるのです。

 このページでは、主に常歩の感覚について取り上げてみます。是非、ご自分の感覚と照らし合わせて読み進めていただければと思います。

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姿勢、特に立位姿勢について誤解している方が多いのです。「気をつけ」のような姿勢が正しいと思っていませんか。「立位姿勢」を見直しましょう。

安定しかつ素早く動くためには、多少乱暴に言えば楽に立つことが大切です。足を肩幅(骨盤幅)に開き足先はやや開きます。次に膝を少し曲げて、骨盤を前傾させます。骨盤を前傾させるというのはお尻が少し後ろに出るようにイメージします。その骨盤の上に楽に上体を乗せてみましょう。腕はだらりと下げて、顎は気をつけのときのようにぎゅっと引くのではなく、緩めて少し出すようにします。

 

 

骨盤を前傾させると自然と胸が張られます。この体幹アーチは個々の柔軟性によって異なります。頭の位置や胸の張り方など調整して最も楽に立てるポジションを見つけてください。横から見たときに頭頂・肩の真ん中・大転子(大腿骨上部の出っぱった部分、股関節の位置)が垂直に並ぶと理想的です。

 さらに重要なのは重心を落とす位置です。立ったときに足底の拇指球付近(つま先付近)に圧力がかかっていませんか。そうではなく、足底の踵、そしてアウトエッジ(足裏の小指側)に足圧を感じるようなイメージで立ってください。このような姿勢を「外旋立ち」といい、全身の力を効率よく使うことができる立ち方です。  

 実は「外旋立ち」は昔の日本人の立ち方です。日本では市民が靴を履くようになったのは明治の終わり頃、それまでは草履(ぞうり)や草鞋(わらじ)を履いていました。踵がしっかり地についた立ち方をしていたのです。

 生活の中で姿勢を意識するようにしましょう。この「外旋立ち」をマスターするだけでパフォーマンスが飛躍的に上がることも珍しくないのです。

2009年05月19日

 股関節の位置がイメージできたところで、その操作について学びましょう。まず、股関節の動きを確認しましょう。

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左の図を見てください。股関節には大きく3つの動きがあります。脚を前後にふるときの動きを屈曲・伸展といいます。

 つま先(膝)がからだの内側を向いたり外側を向いたりする動きを内旋・外旋といいます(わかりずらい場合は、右の図で確認してください)。

 そして、脚がからだから離れたり近づいたりする動きを外転・内転といいます。

 常歩(なみあし)は、そのなかで内外旋の動きに着目しました。例えば、みなさんが歩いたり走ったりするときには、脚が前後に動く伸展・屈曲の動きをイメージするのではないでしょうか。しかし、その動きに内旋・外旋の動きが加わることによって合理的な動作になるのです。

 そのためには、立位姿勢や走歩行での着地脚のつま先(膝)の向きがやや外を向くことが理想です。

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 左の写真をみてください。08年北京オリンピック陸上競技女子100メートルのゴールです。見事な外旋着地です。

 さて、ここで股関節外旋について理解していただきたいことがあります。それは、外旋外旋位についてです。

 外旋とは股関節外旋の力が加わっていることをいいます。大腿骨が外に回る力がかかっている状態です。

 一方、外旋位とは骨盤に対してつま先(膝)が外を向いている状態をいいます。力の方向は関係ありません。ですから、股関節外旋位であっても内旋(内旋力)がかかっている場合もあるのです。

 上の写真の右の選手を見てください。左足は見事な外旋着地ですが、すでに右脚は前方に振り出され左の股関節内旋がかかりつつあると思われます。

 外旋外旋位内旋内旋位を理解しましょう。

2009年05月19日

 私たちが動作するときには「内力(筋力)」「外力(重力)」を使います。もう一度、このページの「合理的身体操作とは」「内力と外力」の項をみてください。

 そして、前に倒れこみながら1歩前にでる動きをしてみてください。そのときに次の二つの方法で行ってみましょう。まず、からだを前傾させるときにつま先立ちになって踵(かかと)をあげてみましょう。次に、をつけたまま倒れこんでみましょう。をつけたまま、倒れこむと同時につま先をあげるような感じです。

 何回かくりかえしてください。どちらの方法が前傾しやすく前に出やすいでしょうか。を接地さる方が前進しやすかったはずです。

 どうしてでしょうか。を接地させる方法は、より外力(重力)を利用しているからです。

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 左の図をご覧ください。前に倒れるときの支持点と重心を結んであります。垂線との角度を比べてください。を支持点にした方が角度が大きいことがわかります。つまり、を支持点にすればより前傾できるのです。

 このように外力(重力)を最大限に利用するためには、重心点からできるだけ離れたところで支持することが大切なのです。

 前進するときにはつま先よりで支えたほうがスムーズに動くことができるのです。からだをどの方向に移動させるときでも、拇指球あたりで支えていませんか。

 を踏む操作はからだを前進させるときのコツです。後退するときはま先、右移動なら左足のアウトエッジ(外側、左移動は右足のアウトエッジです。楽に立った姿勢からこれらのことを試してみてください。

 を踏むという操作は、足裏全体をうまく使うことの象徴的な表現です。どんなときでもを踏むのではありません。 

2008年11月06日

 もう一度、前傾して一歩前にでてみてください。(「合理的身体操作とは」−「内力と外力」参照)

 すばやく前進するためにもうひとつ動きを加えてみましょう。それが膝を抜くという操作です。踵支持でからだを前傾させます。一歩踏みだすときに支持脚の膝をぱっと小さく曲げてみましょう。膝を小さく抜いた瞬間に、からだが加速して前進します。

 膝を抜くときにつま先に体重をかけてはいけません。踵をさらに踏むのです。この動作と感覚を何回も繰り返しておぼえてください。

 膝の抜きには、いくつかの種類と方法があります。例えば

  1. からだの重心を落とす(さらに落とす)ために膝を抜く
  2. 地面(床)反力によってからだを移動させたり、相手を押すために膝を抜く
  3. 筋肉の伸張反射を使うために膝を抜く
  4. 瞬間的に静的安定を崩すために膝を抜く

などがあります。他にも膝を抜く目的がありますが、以上の4つが代表的なものです。

 膝抜きトレーニング(練習)をしますと、意識しすぎて抜きではなく「屈曲ー伸展」になる方が多いようです。

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 膝の抜き大切な常歩の身体操作の要素なのですが、他の操作ができるようになると自然と身につくと理解してください。 無意識にでる動きという側面がつよいです。

 写真の左足をご覧ください。膝の抜きをつかった剣道の打突です。踵は接地したままです。 この状態から、打突すれば自然と左膝は屈曲していきます。

 下の写真は、左足が離床した直後ですが、左膝を抜きならが離床しています。このときの、左の足関節(足首の関節)をご覧ください。ほぼ90度を保っています。

 一般的な剣道の打突では、左の膝関節と足関節はともに伸展しながら離床します。

 しかし、常歩(なみあし)の打突では逆に膝を抜きながら動きます。

 剣道の打突に限らず、膝の抜き意識すると上手くいかないかもしれません。それよりも、踵で支える感覚を主にした方がいいのかもしれません。このあたりは、個人差があるようですので、ご自分の膝抜き感覚をみつけましょう。

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 股関節とともに重要な役割をするのが肩です。

 一般に肩をいうと、上腕の先端の肩関節②をイメージしますが、肩関節肩甲骨とともに動きます。

 複雑な動きが可能な肩周辺のことを肩甲帯ともいいます。

 鎖骨の片側が胸鎖関節①で胸骨につながっているだけで他の部分は浮いていて肋骨の上をすべるように動きます。

 背中側に位置する肩甲骨も様々な方向に動くことができます。

 しかし、この肩甲骨を十分に使えていない人が多いのです。

 その原因のひとつは、立位姿勢での肩甲骨の位置にあります。

 肩の柔軟性を高めることに熱心な方は多いのですが、日ごろの姿勢で肩甲骨を十分につかえるニュートラルポジションを意識する人はほとんどいません。

 楽に立って、まっすぐに両腕を垂直にあげてください。手のひらを前にして、前額面(体を前後に切る面)にそって両腕を広げながら下ろして体側につけてください。

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 その位置がニュートラルポジションです。

 それよりも肩甲骨がからだの前に位置する場合を前肩、後ろに位置する場合を引き肩といいます。 

 さらにニュートラルポジションで十分にゆるみ、肩甲骨が外側に放たれた状態が理想です。

 この状態を肩甲骨の外放と言います。

 肩甲骨ニュートラルポジション(肩甲骨の外放)にあると、上腕の外旋の操作が容易になります。腕を楽に前にあげてください。手のひらを上に向けながら上腕(肩から肘まで)のようすを観察してください。

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 肘(肘関節の曲がらないほう)が下を向くように上腕が回転します。

 この動きを上腕が外旋するいいます。スポーツなどで脇をしめるといいます。これは、上腕を外旋させながら肘が体側による動きです。

 この上腕を外旋させる操作は、スポーツ・武道(武術)などのあらゆる動作で使われています。工夫してみてください。

 例えば、重心移動にも上腕の外旋がつかえます。上腕が外旋するほうへ重心は移動しやすくなります。

 実は、上腕の外旋状態は人によって違います。その場でにならえをしてください。両腕を体の前に水平にあげてみましょう。肘の曲がる側が上を向くほど、上腕の外旋状態がつよく、内側を向くほど内旋状態がつよいことになります。 

 二軸動作の二軸とは、左右の肩甲骨と股関節を結んだ軸感覚のことです。

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 そして、私たちが二軸動作と名づけたもうひとつの理由は、からだの左右に関する法則(操作法)を見つけたからです。

 つまり、からだの右半身(はんしん)と左半身の特性を知り、それを生かす方法があるのです。

 まず、私たちのからだは左軸(左股関節)には乗りやすく、右軸(右股関節)には乗りにくいのです。

 さらに左右の股関節にはいくつかの法則があります。

 左股関節は外旋しやすく、右股関節は外旋しにくいのです。また、左軸(左股関節)に乗るとからだは前進しやすく、右軸(右股関節)に乗ると後進しやすくなります。

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 また、私たちが右ネジの法則といっているものがあります。

 右ネジ(一般に使われているネジ)は、しめるときには右に回します。ゆるめるときには左に回します。

 それと同じように私たちのからだ(体幹)も、右回転ではしまり左回転ではゆるみます

 例えば野球の右投手と左投手、右打者と左打者は全く違う動きをします。 当然、技術も全く異なります。

 これらの左右の法則は、右利き・左利きとは関係ありません。 左右軸の特性を知ってトレーニングしたいものです。

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