2009年05月22日
動きの3要素を学んだところで、主観と客観について触れることにします。
私たちが動きを学んだり身につけたりするときには、上手な人の動きを真似たり、ビデオを撮ったりします。そして、自分のフォームをつくります。
しかし、なかなか上手くいかないことも多いようです。自分で理想のフォームを描いていても、そのようには動くことができません。
その原因のひとつは、主観と客観のズレがあるからです。
例えば、ターンオーバーする走りを目指すとします。ターンオーバーとは走動作において離地した脚が鋭く前方に切り返されることを言います。(「ターンオーバーと二直線走法」参照)
すばらしいターンオーバーの走りをする選手やそのデータを参考に、意識的に脚を前に切り返そうとしたり、膝を前方へ振り上げようとしても上手くいきません。
それは、実際の動き(客観)とそれを生み出す感覚(主観)が異なるからです。
カール・ルイス選手(1990年代に活躍した陸上選手・オリンピックで通算9個の金メダルを獲得)のコーチであったトム・テレツ氏は、ターンオーバーを生み出す感覚は「足を真下に踏みつけることだ」と語ったといいます。
客観的な動きとは、全く異なる主観(感覚)で、ターンオーバーを生み出していたのです。
また、私たちは様々な動作の教えを「ことば」として受け取ります。しかし、その「ことば」が客観としての「ことば」か、主観としての「ことば」かを明確に把握しないと誤った姿勢や動作を覚えることになります。
スポーツや武道の指導現場では、これらが混在しているのです。
さらにやっかいなのは、主観は個人によって異なるということです。
トレーニングや稽古のなかで、独自の感覚(主観)をみつけることも楽しいことです。
また、個人の感覚も時間の経過とともに変化していきます。1年前の主観(感覚)と現在の主観は違います。常に、現在の新しい感覚を探すことも大切です。