「身体は文化である」・・多くの身体関係の専門家の方々が言われています。私たちの「身体」は、様々なものを時代を超えて受け継いでいます。そして、これからも伝えていくであろう、ということだと思います。だから、「身体」は非常に価値があり、その「身体」を主体として実践されるスポーツ文化もすばらしい。

 全く同感なのですが、身体動作や身体操作を考えるときに、「身体は文化である」ことほどやっかいなものはないと感じることがあります。例えば、素晴らしいパフォーマンスを発揮する選手の動作を考察するとします。考察の仕方は様々でしょうが、選手の身体が文化であるとすれば動作も文化として様々なものを包含しています。最も分かりやすいのは「癖(くせ)」。武道などでは「個癖(こへき)」と言ったりします。その選手が持っている「癖」です。その動作(選手個人の文化)が、パフォーマンスにプラスに作用しているのか、マイナスに作用しているのか判断することは難しいのです。

 「身体操作(論)」とは、そのような動作から合目的な「動き」だけを抽出して、合理的動作を構築することだと思います。一般に「身体運動文化論」といえば、「身体は文化である」ことを前提として「身体」を見ていきます。 内蔵ている文化を包含したまま「身体」を考察します。または、文化と「からだ」の関わりを課題とします。しかし、「身体操作(論)」は「身体」から文化を排除し、合理的または合目的的な「身体」を課題とすることではないかと思います。

  さて、「身体」は時代を超えて文化を包含している例として、女性の「内股」を取り上げてみます。ここ数年、興味を持っている課題です。来日した外国人の多くが、日本人女性の「立ち方」や「歩き方」に違和感を感じると言われています。多くの日本人女性がつま先を内側に向けているからです。ところが、本来、日本人女性は内股ではなかったのです。後天的に「女性らしさの表現」として定着したものと思われます。民俗学者の柳田国男は、日本女性の内股について「美女の嬌態として認められることになった」(『木綿以前のこと』柳田国男・1924年・大正13年)と記しています。「嬌態」とは、「女性が男性にこびる色っぽい態度」(広辞苑)のことです。つまり。女性が男性にたいして「女性らしさ」を表現する方法として用いられたのが「内股」です。様々な資料がるのですが、田中比左良のイラストを紹介します。 

 上は戦前の人気漫画家の田中比左良のイラストです。多くの女性たちのイラストを残しています。すべてのイラストを調査したわけではありませんが、一般女性は和服であっても外股で描いているのに対し、芸者さんを極端な内股で描いています。 女性らしさの表現として、運動に適さない非合理的な姿や動作が用いられてきたように思います。中国の纏足(てんそく)などはその最たるものでしょう。

 日本女性の「内股」は「身体は文化である」ことを明確に示している例だと思います。日本では、多くの女性が幼少のころから「足先を閉じなさい」といわれて育つのかもしれません。また、周りの大人を真似るのかもしれません。この傾向は、スポーツなどの技術や動作習得に関してはマイナスになることは明らかです。さらに、女性の年配者に、膝・腰・股関節などの障害が多いことも、この「内股傾向が大きく影響していると思われます。

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