この講座を受講されている方ならば、ナンバについてご存知だろうと思います。ナンバ・常歩などを言われますように、常歩・二軸動作ナンバと同じものであるとか、ナンバの一種であると理解されている方もおられるようです。まず、下のビデオをご覧ください。



ビデオでもご説明しましたように、ナンバとは、

1、           ナンバとは右足が出るときに右手が出るような同側の手足が前にでる  歩き方のことである。 

2、           ナンバとは、左右の半身(はんみ)を繰り返す歩き方である。 

3、           ナンバとは、胴体(からだ)をねじらない歩き方である。 


と、とらえられています。
 

すでにナンバ歩きナンバ走りというような用語が使われていますので、その意味では間違いであるとは言い切れませんが、ナンバはもともと歩行や走行のような連続動作ではありません。 


上の3項目のようなイメージを連続動作としてもたれているとすれば、常歩・二軸動作の習得には妨げになるかもしれません。 


少し乱暴な言い方になりますが、常歩・二軸動作を理解し習得するためには、 


これまでのナンバのイメージを忘れていただきたいのです。 


そのためにこの節を設けました。 


これまでもっているナンバのイメージを払拭していただくために、しばらくお付き合いください。 


私たちがイメージしていたナンバは、武智鉄二氏(歌舞伎や映画の演出家、評論家)が「演劇伝統論」(1975)や「舞踊の芸」(東京書籍・1985)で紹介したものです。 


その後、「身体の零度」(三浦雅士著・講談社・1996)や「身振りとしぐさの人類学」(野村雅一著・中公新書・1996)によって引き継がれました。これらの著書をお読みの方は多いかもしれません。 


すこし、彼らのナンバ論をのぞいてみましょう。 


昔の日本人は行進ができなかったらしいとう説があります。武智氏は、日本の農民にはもともと集団的歩行の行動がなかっただけでなく、日本人が行進ができなかった理由はその歩き方がナンバであったためとし、さらに 


百姓一揆でもむしろ旗をかかげて、ぞろぞろ足をひきずりながら、歩いたものだったに違いない。ぞろぞろ足をひきずり歩く行動が、武芸的に昇華されると、撃剣などのツギアシ(摺足の一種)になるので、同時に剣道があくまで個人技であることの理由も、根を尋ねれば、農民の生産方式における孤独の労働という性格に戻っていく。(「演劇伝統論」)  


これだけでは、わかりにくいですね。 


三浦雅士氏は「身体の零度」において、 


ナンバというのは、あるいは説明するまでもないかもしれないが、簡単にいえば、右足と同時に右手が出、左足と同時に左手が出る歩き方である。
二、三十年前までは、小学校の運動会などに必ずこういう動作をするものが二、三人はいた。整列行進などで、緊張のあまり、習ったとおりの歩行ができなくなるのである。他の児童が右手を出したところで左手を出してしまうから、前の児童の左手とぶつかってしまう。 


と述べています。 


江戸時代までの日本人がそのような歩き方をしていた根拠として浮世絵がよくあげられます。江戸時代の浮世絵には同側の手足が前にでて歩いている人間の姿が多く描かれています。 

また、ナンバ歩きについて、同側の手足が同時に前にでると理解している方の中には、具体的には左右の半身を繰り返すと考えている方が多いようです。武智氏は「舞踊の芸」で左右の半身を繰り返すことを詳細に説明しています。


 ナンバの姿勢を説明するときに、よく、右足が出るとき右手も前にだす、というように説明される。しかし、これは正確ではない。日本民族のような農耕民族の労働は、常に単え身でなされるから、したがって歩行の時にもその基本姿勢を崩さず、右足が前へ出るときは、右肩が前へ出、極端に言えば、右半身全部が前へ出るのである。
 しかし、このような歩行は、全身が左右交互にむだにゆれて、むだなエ不ルギーを浪費することになるので、生産労働の建て前上好ましくない。そこで腰を入れて、腰から下だけが前進するようにし、上体はただ腰の上に乗っかって、いわば運搬されるような形になる。能の芸の基本になる運歩もこのようにしてなされるのであって、名人芸では上体は絶対に揺れることがない。
 ただし、日常行動では能ほど厳格でなくてもよいので、上半身の揺れを最小限にとどめる程度であるかもしれない。この場合、右足が出たときには右肩も少し出るが、背筋をしっかり伸ばして、背筋の力で肩の揺れを留め、エネルギーのロスを最小限とするように心がける。
 

さて、ナンバに関する武智論を見てきましたが、いかがでしょうか、納得されたでしょうか。


これら武智鉄二氏やその後のナンバの解釈の影響で、ナンバは「同側の手足が前に出る」とか「左右の肩を入れかえて歩く」というように理解されて広まったのです。


しかし、これらの解釈は明らかに誤解です。この誤解にきづいたことが、常歩(なみあし)・二軸動作をつくりだす要因になりました。


常歩・二軸動作
は、これまで言われてきたナンバとは全く異なるイメージ(感覚)の動きです。ナンバのイメージを持っておられる方は、まず、それを忘れて常歩・二軸動作に取り組んでみてください。新たな動作が生まれると思います。

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