「左荷重の剣道」対「無限流」

2018-01-23

 左荷重の剣道に取り組んでいる学生(上)と卒業生(下)との稽古。二人とも若い剣士ですが、左に荷重するタイミング(機会)を変えていくと、このように左かかとが下がり、それにともなあって左腕が外旋傾向になるので「三所防御」のような左こぶしが大きく外れることがなくなってきます。しかし、この剣道で競技力が落ちることはありません。

 下の動画の卒業生は昨年の全日本剣道選手権福岡県予選で活躍し4月から剣道で実業団への入社が決まりました。活躍を期待しています。

剣道は日本の真ん中だった

2018-01-15
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スキージャーナル社から「剣道日本・休刊告知号」が送られてきた。編集者からそれとなく聞かされていたが、休刊告知号を手にとるまでは実感がなかった。この休刊号、これまでのものとはページ数も減り装丁も異なるものとなっている。編集部の方々の心中を察するに余りある。

 「剣道日本」は私の人生を変えた雑誌である。「剣日」と元編集長の鈴木智也氏との出会いがなければ剣道の専門家としてここにいることはなかった。平成10年に拙論「現代剣道技術論序説‐しない打ち剣道の技術特性について‐」の掲載を皮切りに何度も論考やインタビュー記事を掲載していただいた。そして、平成16年には拙書「本当のナンバ常歩」を上梓させていただいた。「剣日」と鈴木智也、そして編集部の方々には感謝しかない。鈴木氏とは仕事を離れてもお付き合いをさせていただいている。彼は休刊告知号の中ではじめて読者に明かしているが、歴代編集部で唯一の剣道未経験者である。剣道家よりも剣道に詳しい剣道未経験者なのだ。よって、彼との剣道談義は剣道関係者と話すときのような居心地の悪さがない。

 さて、告知号の中で鈴木氏が「剣道を旅して」の記事である写真(右)を紹介している。これは、昭和31年、仙台市の宮城球場で開催された第3回全日本東西対抗剣道大会の様子だ。この大会は第1回全日本なぎなた選手権大会と同時開催であった。観客数25000人。剣道未経験者も多く会場に足を運んだと思われる。戦後の剣道(武道)はこれほどまでに人気があったのだ。何がこれほどまでに当時の日本人を惹きつけたのであろうか。記事の中で鈴木氏がサブタイトルで表現しているように、まさしく「剣道は日本の真ん中だった」のだ。決して、観客を惹きつけたものは勝負だけではなかったはずである。そこには現代剣道が置き去りにしてきたスポーツにはない「武の真諦」があったのかもしれない。

左足が右足を追い越す・・・

2018-01-15
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 寒げいこも後半戦、負傷する場合は後半に集中します。部員らの打突動作に目を光らせなければなりません。

 さて、「打ち込み稽古」や「かかり稽古」で左足が右足を追い越す剣士がいます。剣道では、どんな場合でも「左足は右足を追い越さない・・・」という教えもありますが、右足への荷重のタイミングで直すように指導する場合と、そのままでいい場合があります。

 右の写真のように左足が右足を追い越したときに、竹刀の振り上げ動作がはじまっていなければ直す必要はありません。逆に、右足を左足が追い越した方が左足に荷重しやすいので「左荷重の打突動作」をやはく習得できます。

 「打ち込み稽古」や「かかり稽古」では同じように見えても、アドバイスが必要な剣士と必要がない剣士がいます。今年は、ほとんど直す部員がいませんので、上下肢の協調がうまくいっている証拠です。

 寒げいこ、あと二日・・追い込みます。

寒稽古の目的は・・・?

2018-01-10
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 本学(九州共立大学)剣道部の2018年の寒げいこが10日から始まりました。寒げいこは指導者によってそのねらい(目的)は様々だと思いますが、多くは「打ち込み稽古」や「かかり稽古」で運動量を確保することをねらい(目的)にしているのではないかと思います。本学も「打ち込み稽古」「かかり稽古」を中心に実施します。しかしながら、その量は年によって異なります。

 一昨年は最終日には1時間の「かかり稽古」を課しましたが、昨年は40分ほどでした。年によって打突動作の完成度に差があるので、この時期に「打ち込み稽古」や「かかり稽古」の量を増やせない年もあるのです。私は「打ち込み稽古」や「かかり稽古」の目的を打突動作時の「上下肢の協調を定着させること」に置いています。量を増やしていき「上下肢の協調」が崩れる学生が多い年には、この時期にそれらの量を増やすことを控えます。

 「上下肢の協調」とは言うまでもなく左荷重で振り上げることです。「打ち込み稽古」や「かかり稽古」で、様々な打突動作で常に左荷重から打てることが目標です。そして、それが無意識のうちに発現するようになると必ず競技力も上がってきます。

 大学生ですので競技力が上がらないとモチベーションが保てません。「打ち込み稽古」や「かかり稽古」で競技力が上がると実感させることが大切であると思います。

朝鮮大学(韓国)剣道部との交流を開始します。

2017-12-24
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 12月22日(金)、本学(九州共立大学)剣道部は、韓国光州市の朝鮮大学剣道部のソ・ヨンファン部長(右)とオ・ギルヒョン監督(左)の訪問を受けました。

 オ・ギルヒョン監督は、韓国ナショナルチームでご活躍された経歴を持ち、現在では朝鮮大学剣道部に監督として招かれています。

 稽古を見学していただいた後、博多のもつ鍋で剣道談義。韓国剣道選手の実情や剣道の国際化、オリンピック参加問題など、または剣道をはなれて北の問題など貴重な意見交換ができました。

 韓国の剣士も、武道とスポーツ、競技化、審判の判定など、日本の剣士とほぼ同じ課題を抱えていることが確認できました。

 2月には朝鮮大学剣道部が本学を訪れ、稽古や試合をお願いすることとなりました。

第65回全日本学生剣道優勝大会

2017-10-29
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 2017年10月29日(日)、全日本学生剣道優勝大会が東京九段下の日本武道館で開催されました。本学(九州共立大学)は初戦で慶応義塾大学に0−3で敗戦しました。

 本学はご承知のとうり、現代の特に若い剣士が用いている「右の剣道」(右荷重から打突に移行する)ではなく「左の剣道」(左荷重から打突に移行する)を習得することを一つの目標としています。

 指導を始めた当初は、競技力を上げることは大きな目的ではなく、部員が将来、さまざまな足さばきの剣道に移行できる基礎を養えればいいと考えていました。

 しかし、左荷重から打突する剣道実践させると、それを習得した剣士たちが競技力も上がることが分かりました。そして、今年男子は3年連続で全日本大会へ出場です。

 高校から本学剣道部に入部して、いち早く「左荷重の剣道」へ移行することを決意する部員から競技力を上がっていきます。なかなか成果が出ない学生は、「右荷重」と「左荷重」の剣道を行ったりきたりします。

 現代剣道が「右荷重」一辺倒になっていることに危惧を感じています。

左荷重で3年連続全日本へ・・

2017-09-10
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 9日、全九州学生剣道優勝大会・同女子大会が開催されました。男子はベスト8で3年連続全日本へ。女子は決定戦で惜敗、3年連続全日本へのアベック出場はなりませんでした。

 本学剣道部は「左荷重」の稽古法を導入しています。高等学校までは右を踏んでから(一歩攻めてから)打ち出す剣道を習ってきている学生らは、最初は戸惑うみたいです。しかし、稽古を重ねていると徐々に成果があらわれてきます。

 今年の男子は、昨年から選手が大幅に入れかわり2年生中心のチーム。大会直前の試合稽古で大敗するなど不安材料もありましたが、どうにかベスト8に進出、準々決勝の名門F大学との試合は大将戦までもつれ込みました。

 10日前から左荷重からの「入身」 に力を入れました。その成果が出たかたちです。指導していると新しい発見ばかりです。本学に赴任して剣道指導ができることに感謝しています。

試合規則と内容の変化

2017-07-31
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  7月29日(土)は玉龍旗大会(マリンメッセ福岡)を観戦いたしました。今年は、西日本新聞社創刊140周年記念大会。男子準決勝まで観戦しましたが、所用で決勝は観ることできませんでした。

 決勝は、九州学院(熊本)対高千穂(宮崎)の対決。九州学院が勝利、男子では史上初となる4連覇を達成。9度目の頂点に立ちました。高千穂は1991年以来26年ぶりの優勝はなりませんでした。

 それにしても九州学院は強い。玉竜旗も4年連続優勝なのですが、インターハイに優勝すれば、春の選抜、玉竜旗、インターハイと4年連続で高校3冠を達成します。

 3位は育英高等学校(兵庫)・東福岡高等学校(福岡)。

 女子優勝は中村学園高等学校(福岡)・準優勝は筑紫台高等学校(福岡)、3位は守谷高等学校(茨城)・桐蔭学園高等学校(神奈川)。

選手の皆さん、素晴らしい試合をありがとうございました。そして、大会関係者の方々お疲れさまでした。

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 さて、玉竜旗の会場で、福岡県内の強豪校の監督をされていた先生に久しぶりにお会いしました。2時間ばかり雑談いたしました。 玉竜旗大会(男子)の一回大会からの優勝チームの記録をまとめておられました。

 興味深いのはルールによって試合内容が激変していることです。1回から27回までは各試合引き分けがありません。個人戦と同様に勝負が決するまで行われていたようです。当初は、無制限1本勝負だったようです。

 28回大会から53回は、4分3本勝負で延長が2分を2回、もしくは4分3本勝負で延長3分1回です。私自身が高校生で出場させていただいたのはこの時期です。それでも引き分けはほとんどありません。優勝チームの全試合に対する引き分け率は3パーセント弱です。

 ところが、66回大会以降は延長がなくなります。そうすると、引き分けが激増します。途中から上位の試合は大将が負けるまで、とルールが変わりますが、それでもこの20年間の男子優勝校の全試合に対する引き分け率は28パーセント、これは、1〜2回戦あたりの実力差があるチームとの対戦での五人抜きの試合も含んでいますので、3回戦以上ならば50パーセント近くになると思います。
 このことはルールの変容だけが原因ではなく、延長がなくなったために各チームが「引き分け」を戦術として用いだしたことも影響があるようです。

左荷重の卒業生、全日本剣道選手権福岡県予選会で健闘

2017-07-10

 「なみあし剣道稽古法」のページで紹介している本学剣道部の卒業生が、全日本剣道選手権大会福岡県予選会に出場し健闘いたしました。

 動画は一回戦の模様です。相手は、全日本剣道選手権大会で3位の経験もある強豪でした。延長戦で出頭面で勝利しました。残念ながら、3回戦で今回県代表の県警の剣士に延長で敗れましたが、終始有利に試合を進める展開でした。

 動画をみると、初動がスムーズになっています。「学生時代より右を踏むタイミングを遅くして左で待つようにした・・」と語っています。彼は、卒業後、会社員として生活していますので、現在では月1〜2回しか稽古ができないと言っていますが、「稽古の頻度が少なくても実力が落ちることはないようだ」とのことです。

 今後の活躍を期待します。

九州体育・スポーツ史学会第65回大会(長崎国際大学)2016.09.16

2016-10-04
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 先日(9月16日)、九州体育・スポーツ史学会第65回大会(於、長崎国際大学)のシンポジウムで、「剣道の伝統的動作を継承するために」というタイトルで発表させていただきました。研究と現場のコーチングをいかに結びつけているか、がテーマでした。

 わたくしは、まさしく研究と剣道部のコーチング(指導)が直結しています。現在、提唱している剣道は「左荷重」からの打突。剣道部の稽古は、すべて「左荷重」から打突するための内容で組み立てています。そして、左右荷重で剣道の動作を把握すると、個々の剣士への指導法も明確になってきます。様々な稽古法を取り入れて、その中から試行錯誤して内容を取り入れるのではなく、どのような稽古法が必要か明確になります。

 この左右荷重からのコーチングは、他競技でも応用が可能であると思われます。

2年連続、男女とも全日本大会へ

2016-09-11
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 9月10日(土)に開催されました全九州学生剣道優勝大会・同女子学生剣道大会において、本学(九州共立大学)剣道部は男子3位・女子5位に入賞し、2年連続で男女とも全日本大会への出場権を獲得しました。

 本学剣道部のモットーは、「気合で勝つな、理合いで勝て」

 稽古は週8時間。たぶん、全日本大会出場をノルマにしている剣道部で最も少ないと思います。夕方の稽古は月曜・火曜・木曜に1時間半。水曜日と金曜日は朝稽古1時間のみ。土曜日は午前中に1時間半。

 その中で、左荷重の剣道を指導していきます。間合いに接したとき(打突の初動時)に左脚に足圧を感じるように動作させます。左荷重ですから、その局面で右足しか動きません。右足が必ず出ていくことになります。すると、一足一刀から間合いに入ることによって相手の打ち間を外すことができるようになります。

 現代剣道では右に乗っていますから、無意識に左足が動きやすいのです。よって、間合いを切って打ち間をはずす方が簡単なのです。つまり、相手の打間を外す方向と打突していく方向が逆になるので技術として矛盾が生じるのです。習得するのにとても時間がかかります。

 左荷重の剣道はコツさえつかめば短期間で上達していきます。合理的で簡単です。

 学生らはこの剣道が「なみあし剣道」だと思っているようですが、これは「なみあし剣道」ではありません。左荷重の剣道は現代剣道と「なみあし剣道」をつなぐ剣道です。

「つばぜり合い」の解消

2016-08-23
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 今年も大学剣道は団体戦試合のシーズンを迎えました。本学(九州共立大学)剣道部は、春の個人戦は運よく男女とも全日本大会に選手を送り出すことができました。

 団体戦も昨年は男女とも全日本学生優勝大会に駒を進めることができました。

 大学剣道を指導し、地力をつけさせるだけではなく競技としてもある程度実績を残すためには、多少なりとも試合のコツを伝授しなければなりません。

 その一つに、つばぜり合いの解消があります。つばぜり合いの解消は高体連の試合では10秒ルールが適応されています。つばぜり合いになってから10秒以内に技を出すか、もしくはつばぜり合いを解消しなければなりません。

 大学・一般は10秒ルールの適応はありませんが、同様にお互いにつばぜり合いを解消しなければなりません。現代の剣道試合のコツの一つは、このつばぜり合いの解消にあります。どのように解消するのか、そして解消後にどうするのか、を指導する必要があります。

 詳細は書けませんが、高校生と大学生ではその指導方法は全く異なります。なぜかといえば、つばぜり合い解消の定義が全く違うのです。大学生にそれを教えないと、高校での解消の仕方をそのまま続けてしまいます。

 剣道の本質から考察すると、現在のように試合時間の多くがつばぜり合いに使われているのは好ましいことではないと思いますが、競技としての剣道では、このつばぜり合いの工夫で勝率をあげることができます。

インターハイ剣道競技(岡山)を視察

2016-08-05
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 8月2日(火)〜5日(金)に行われたインターハイ剣道競技大会を視察。5日に決勝が行われた。

 男子は優勝・九州学院(熊本)、2位・麗澤瑞浪(岐阜)、3位・福大大濠(福岡)、3位・国士舘(東京)。女子は、優勝・中村学園女子(福岡)、2位・西大寺(岡山)、3位・阿蘇中央(熊本)、3位・錦江湾(鹿児島)。

 男子個人、優勝・星子敬太(熊本・九州学院)、2位・梶谷彪雅(熊本・九州学院)、3位・小角朋樹(岐阜・麗澤瑞浪)、3位・高山裕貴(奈良・奈良大附属)

女子個人、優勝・小松加奈(青森・東奥義塾)、2位・浅野茉莉亜(青森・東奥義塾)、3位・松本泉帆(和歌山・和歌山東)、3位・庄島亜美(佐賀・白石)。

 男子は九州学院が圧勝。女子は中村学園が初優勝、そして、個人は男女とも同一校で決勝が戦われた。

 4日(木)、5日(金)の二日間、観戦したが、上位進出校はある意味基本に忠実である。相手の手元を崩すことに専念している。そして、相手の打突を受けるときに可能な限り自分のからだから遠い位置でさばいている。これは、五輪書にある「突き受け」の原理だ。

 しかし、全体的にみると大学の試合と比して一足一刀の間合いでの攻め合いがない。これは寂しい感じがした。選手に「一足一刀で攻め合え」というのはナンセンス。その間合いでの攻防が成り立つように規則を工夫する必要がある。

 インターハイは振り返ると、自分が高校生時代に出場して以来の観戦となった。大学生の大会とはまた異なる魅力がある。

右の床反力

2016-05-12
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 「左荷重」の剣道は一連の動作経過の中で見ていく必要があります。高段者で左配分が多い構えでも、ほとんどの剣士が「右荷重」の剣道を実践しています。

 少し違う側面から見てみましょう。「左荷重」の剣道とは、言いかたを変えると打突動作の初動で極力、右足の床反力を使わない剣道であるということです。構えですでに右配分が多い構えは、右足の床反力を利用して右足を上げて打突に移行します。そうではなく、左配分の構えから右の床反力を用いないで動き始めるのです。

 ですから、左右の足がどのように動いて打ったかは関係がありません。ここがポイントです。

 多くの剣士や指導者は足さばきで判断してしまいます。例えば、打突前に左足が動くとか、動かないとか、また、竹刀の振り上げ時に右足が出ていくか、出ていかないか、などです。

 このように可視的な動きを見ているうちは剣道の動作の本質は分からないのです。あくまで、左右の荷重を見ていきます。左足を動かさずに打突しても、右の反力を利用する打ちもあれば、利用しない打ちもあるのです。一見、見分けがつきません。

 そして、もう一つ大切なポイントは、右の反力を用いると「踏み込み足(飛び込み足)」にしかならないとです。右を踏んで反力をもらうのですから、その反力を利用して右足を床から離さないと右足が前に出ていきません。「右荷重」の現代剣道では様々足さばきに転化していかないのです。

左荷重から打つ

2016-03-22

 先日、就職関係の講座で部に参加できない女子部員が、午後稽古をするというので道場へ。二人で基本を繰り返していまいた。どんな打突も左足裏に圧を感じてから振り上げるように指導しています。

 まだまだ不十分な局面もありますが、左荷重から打つ稽古を繰り返すと、女子でも徐々に左踵が下がってきます。しかし、本人はそのことに気づいておりません。自然と下がります。

 さて、この左荷重からの打突は基本なのですが、試合では間合の入り込みが早い大学生には間の取り合いで負けることがあるのです。今は、左荷重から打たせますが、試合が近くなると右から左への移りを早くする稽古ををとりいれます。この加減がとても難しい。

 私自身は左に乗れば乗るほど打ちやすいのですが、部員らは足関節と膝関節の屈曲がよくできないので、左に完全に乗せてしまうと動きにくくなるのです。部員の動きをみながら稽古内容と量を即座に決めていきます。全体をみながら、チームが最も力を発揮できる左右の配分を探ります。

 また、時間があるときは、面と小手を交互に稽古させます。面と小手が同じ重心移動で打てるようにします。その方が打突動作が合理的になります。

左荷重で躍進

2016-01-28

 剣道日本1月号(12月発売)に「左荷重で躍進した・・・」として九州共立大学剣道部が紹介されました。

 左の記事をクリックしていただくとPDFをダウンロードしていただけます。さて、記事の中で学生が左荷重の剣道について、

 「180度変わりました。今までの常識が真逆なんです。当たり前のように言われていたことが違う。」

と語っています。

 私は剣道の伝統をいかに受け継ぐか、ということを考えてきました。これまでは「竹刀を日本刀と考える、感じる」、つまり「竹刀を日本刀のように振る」ことによって伝統を受け継ごうとしてきたと思います・。

 しかし、運動学の観点からは、道具が変われば技術が変わるのは当たり前なのです。プロ野球の世界では、投手が落ちるボールを多用することに適応するために1980年代から比べると平均20グラムほどバッドが軽くなったそうです。その20グラムの変化によりバッティングの技術も大きく変わったといわれています。

 ですから、竹刀を日本刀のように振りながら、競技としての剣道で勝利を得ることはほぼ不可能なのです。

 そこで私は歩行形態に着目しました。竹刀を日本刀の観念で振るのではなく、日本刀を用いていたころの前近代(維新前)の歩きの原理で竹刀を振ることで剣道の伝統が保たれると考えました。

 歩行形態から剣道をみると、なぜ現在の剣道が踏み込み足を多用するのかも分かります。そして、昔の歩き方を基礎とした剣道を今の若い剣士に教える方法を開発しました。それが、左荷重の剣道です。今まで学生は右荷重の剣道をしてきましたから、最初は真逆だと感じるようです。

寒稽古

2016-01-19
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 本学剣道部は18日(月)より寒稽古。この時期は、「かかり稽古」中心の稽古です。ねらいは、左荷重から打突する上肢・下肢の連携を強化する(かためる)ことにあります。

 昨年も最終日には約1時間の「かかり稽古」を実施しました。学生の動作を観察しながら徐々に量を増やしていきます。「かかり稽古」で効果を出すためには、それまでに左荷重から打突する基本が習得されていること。右荷重のまま「かかり稽古」をさせるとさらに右荷重となってしまいます。

 そして、これは秘伝なのですが(公開するともう秘伝ではなくなりますが・・・)かかり稽古は絶対に大技ではさせません。よく大きく振ることが良しとされますが、打突を大きくさせると右荷重に戻ってしまいます。大きく振ろうとすると右の床反力で竹刀を振り上げるようになります。大きな打突は「打ち込み」や「かかり稽古」ではなく基本打突として指導しています。

 また連続技を繰り返す「追い込み稽古」も厳禁です。右荷重になります。左荷重の剣道の消失の原因は歩き方の変化にあるのですが、大きな「打ち込み稽古」や「追い込み稽古」などの普及がそれに拍車をかけたと思います。言いかえると、右荷重の剣道の出現がそれらの稽古法を生み出したといえるのかもしれません。

左踵は「つける」のではなく自然と「つく」

2015-12-09
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 本学剣道部、試合稽古の一コマ。

 赤の剣士の左かかとに注目してください。接床しています。左右の荷重のタイミングを変えると自然と左かかとが床についてきます。

 学生に常歩剣道を指導する前は、左かかとが接床することはないと思っていました。しかし、左に乗るためには左足裏の接地面積を広くとる必要があるため、左かかとが接床する剣士が続出します。

 本人はそのことに気づかないことが多いようです。知らず知らずのうちに左かかとがつくようになります。当然、左右の荷重を繰り返すので、長時間かかとが接床することはありません。左荷重のときにかかとが接床するのです。

 しかし、このことを真似して最初から左かかとを接床することを意識すると上手くいきません。構えと左荷重のタイミングを習得してくると自然と接床するようになります。

 そして、左かかとを接床した状態から打てるようになります。打てるように・・というより、接床している方が打ちやすくなるのです。

 この左荷重の剣道を続けていくと、さまざまな足さばきに転化するようになります。伝統的な足さばきがよみがえります。

 また、相手との間合いが接したときに左に乗っていますから、攻めが利くようになります。また、左上腕が外旋(外の回る)するので剣先の威力が増します。

第63回全日本学生剣道優勝大会(2015.10.25)九共大対中央大学、副将・大将戦

2015-10-28

 第63回全日本学生剣道優勝大会(2015.10.25)、一回戦、九州共立大学対中央大学、副将・大将戦がアップされました。彼らには一年間、左荷重のタイミングを指導してきました。まだまだ未熟ですが徐々に成果が表れています。白のタスキが本学です。

左荷重から打つ

2015-09-16

 左荷重から打つ稽古です。この二人の女性剣士はまったく異なる打ち方をしているように見えますが、どちらも左荷重から打突しています。左荷重からの打突とは、竹刀の振り上げ直前に左荷重になっていることを言います。白稽古着の選手は右足を浮かせて左荷重(左を支点にする)を作ってから打つ稽古をしています。この稽古で実際には右の離れ(床から右足が離れるはやさ)がよくなります。

 黒稽古着の剣士は右足を早く着床させて、左足の振り込みと竹刀の振りおろしを一致させる稽古をしています。この稽古によって左足の引きつけが早くなるとともに、二の太刀が出るようになります。

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