左荷重の剣道(地稽古)

2017-03-06

 左荷重の剣道を実践するとどのような剣道が発現するのでしょうか。

 卒業(平成28年度卒)を前に、今年度のチームの大将と副将をつとめた学生二人の地稽古を撮影しました。ご覧いただければ分かるように、現在の若い剣士とはかなり違う剣道をしています。

 この学年たちが2年生の春から「左荷重の剣道」を指導しはじめました。左荷重の剣道とは、ずっと左足に荷重しているのではありません。ここを間違えないようにしてください。

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 現代剣道と左右を逆にするのです。逆にするというのは、現代剣道で右に荷重している局面を左荷重に、左に荷重している局面を右荷重にします。最もわかりやすいのは、竹刀の振り上げです。現代剣道は竹刀の振り上げを右荷重で(右足を踏んで)行います。それを左荷重で(左足を踏んで)振り上げるようにします。

 また、現代剣道では右荷重をつくってから打突します。左荷重の剣道は右荷重を経過せずに打突します。ですから、私は「攻めて打て」とは言いません。「攻める」という動作を若い剣士らは右を踏むことをイメージするので、「攻めて打て」と指導すると、ますます右足を踏んで打突するようになります。

 それから二人とも、ほぼ左かかとが接床しています。これも自然と接床してきます。指導でかかとのことを指導したことは一度もありません。左足に荷重するタイミングを丁寧に教えていくだけです。

 学生らは試合も左荷重の剣道を実践しています。ほぼマスターすれば競技力が落ちる(試合が下手になる)ことはありません。彼らのチームは九州学生剣道優勝大会に2位(平成27年度)と3位(平成28年度)で全日本学生優勝大会に出場しました。逆に、競技力は向上していきます。

 写真は、最後の相打ちの面です。手前の選手の左かかとに注目してください。打突の直前まで左かかとは接床したままなのです。この後、素早く左ひざを前方に送り出していきます。

 現代剣道とは全く違う原理で打っています。

 左荷重による基本稽古法も撮影をしていますので、徐々にアップしていこうと思います。

左に乗る(荷重する)とは

2015-11-19
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 常歩剣道の基礎となる「左荷重の構え」、多くの剣道実践者が最初の構えでつまづいておられます。

 上の写真を見てください。どちらが左荷重でしょうか。多くの方は、左の写真が「左荷重」、右の写真が「右荷重」と答えるかもしれません。そして、多くの剣道家が「左荷重」の構えに挑戦するときに腰構えをそのままにして後足(左足)に荷重しようとします。すると左のような構えになります。

 実は逆なのです。右荷重の構えから左右の足幅を狭くして、お尻を後方に引く要領で骨盤を前傾させます。すると、左足の踵がさがり荷重してきます。左に荷重してきますが上体(体幹)は前傾するので右荷重のように見えるのです。しかし、足圧は右から左に移ってきます。

 このことを誤解しないようにしてください。左荷重は「後ろ足荷重」ではありません。実は、この左荷重の構えの骨盤の状態が一本歯(後歯)の下駄を履いた時の状態と全く同じです。下駄を履いて左の写真の腰構えはできません。

 まずは、構えをつくることですこの構えをつくれるかどうかが左荷重の剣道に移行できるかどうかの分かれ目です。そしてスタートです。本学の剣道部員でも「左荷重で」強くなるのは例外なく右の写真の構えを得とくした剣士です。是非、挑戦してください。

左荷重で大きく打つ

2017-03-11

 左荷重の剣道で最初に取り組ませる打突法は、上の動画のように「一足一刀の間合い」から大きく打ちます。簡単そうにみえますが、左荷重の剣道を習得するためにはコツが必要です。竹刀を振り上げるときに、右足を上げるか上げないかは関係ありませんが、左足に足圧がかかるようにします。

 右足が接床したまま、振り上げると多くの剣士は右に荷重しながら振り上げます。そのような剣士には竹刀の振り上げと当時に、右足を上げるように指導します。

 本学剣道部では年間を通じてこの打突を繰り返させます。この打突法によって、竹刀を振り上げる直前と振り上げ時に左に乗ることができるようになります。 

 また、面打ちと小手打ちを交互に稽古することも大切です。 

左荷重の剣道(遠間から一歩攻めて打つ)

2015-11-17

 一足一刀の間合いから左荷重で打突できるようになったら、遠間から一歩攻めて面と小手を打突します。

 この打突は多くの剣士が稽古していると思いますが、左荷重で打突している剣士はほとんど見受けられません。動画みていただくとわかるように、竹刀の振りはばとか右足が上がっていくタイミングなどの可視的な動きは関係ありません。

 ただ、一歩攻めて左足が床を踏んだ瞬間の床反力で竹刀を振り上げるようにします。つまり、からだの左側で得る力で竹刀を操作します。この稽古は大きく打突する方が右荷重の打突になりやすいので注意が必要です。

左荷重から右足で攻めて打つ

2017-04-03

 「一足一刀の間合いから大きい打突」「遠間から一歩攻めての打突」の稽古とともに、左荷重から右足で攻めて打突する稽古をします。右足で攻めて左足を継がずにそのまま打突します。この打突は高段者が好んで行うと思われがちですが、左荷重を体得すれば若い剣士でも比較的容易に習得できます。

 この稽古も面と小手を交互に稽古するようにします。学生にこの稽古をさせているのは、実は打突が目的ではありません。右足のすり足を覚えることによって近間に入ることが容易になります。間合いを中(相手との距離を詰めて)で外せるようになります。

左荷重から「右⇒左」で正面を打つ

2017-04-09

 「左荷重」からの踏み込み足が自然にできるようになったら、次は動画のように「左荷重」から「右→左」と歩み足で打突する稽古をしましょう。構えで左荷重になっていないと動画のようにすり足で打突することができません。ここは重要なポイントです。そして、左足での打突は、左足を前方に「振り込み(送り込み)」ながらの打突です。左足は踏み込み足にはなりません。

 中段の構えから歩み足で打突しようとすると、逆に「左→右」に順序で足を送った方が自然に感じるかもしれません。しかし、「左→右」の歩み足は、現代的歩行形態による打突です。「左→右」の歩み足による打突は左足での打突には転化しないのです。

 この「右→左」の歩み足こそ、伝統的打突法の原理です。

 最初は、ゆっくり「右→左」の歩み足による打突を稽古してみてください。様々な足さばきの基礎となります。

左荷重から「右⇒左」応用

2017-04-18

 左荷重から「右⇒左」と歩み足で打突する稽古法をご紹介しました。

 一見、現代剣道には相いれないと思われる足さばきですが、様々な技に応用できるのです。上の動画は「面返し胴」と「面すりあげ面」です。

 「面返し胴」は、足元を見ただくと「右⇒左」の歩み足になっています。「面抜き胴」や「面返し胴」は、「右⇒左」を応用することで容易に打突できるようになります。

 また、「面すりあげ面」もまだ学生なので踏みこみ足(理想的にはすり足がよい)になっていますが、相手の竹刀をすりあげる局面で左荷重になり右足が動くことがコツなのです。右荷重の現代剣道では、相手の竹刀をすりあげる局面で右足が動くのではなく、右を踏むので、すりあげ技を打つことができません。

 「右⇒左」の歩み足の打突を稽古することで、様々な足さばきの技が打てるようになります。

歩み足の切り返し

2017-04-29

 歩み足での切り返しです。この切り返しは教えていないのですが、学生の一人が考案してやりだしました。すると、他の部員も真似をするようになりました。学生の段階では歩み足の切りかえしは必要ないと考えていましたが止めさせることはしませんでした。

 現在では、左荷重の剣道の稽古法の一つとして定着しています。

左荷重の剣道(試合)

2017-05-09

 左荷重剣道の稽古法を紹介してきました。

 地稽古では左荷重の構えから「出頭技」を打つように指導します。右荷重の剣道は、打突の機会に右足を踏んでいるので、狙って出頭技を打つことができません。

 また、現代剣道(右荷重)の試合では、出頭技や相打ちの技は危険であるため避ける傾向にあります。しかし、私はあえて出頭技や相打ちの技を多用するように指導します。左荷重から相打ちの打突を狙うようになると、相手の打突の気配を敏感に感じることができるようになってきます。すると、相手の打突を間を詰めて(入り身で)かわせるようになります。これができるようになると、試合での負率が著しく減少してきます。つまり、負けない(打たれない)ようになってきます。

 上の動画は一昨年の本学対中央大学の試合(副将・大将)の試合(全日本学生剣道優勝大会)です。三将までで団体の負けが決まった試合なのですが、左荷重を体得していた副将・大将は互角の試合を展開しています。この二人は後日、雑誌の取材を受けました。大将の剣士は、「今までの常識が真逆なんです」と語っています。真逆とは右足と左足を踏む機会が180度違うことを指しています。

 さて、左荷重剣道の稽古法を紹介してきましたが、これは現代剣道から常歩剣道に移行するための稽古法です。次回からはいよいよ常歩剣道の稽古法を紹介していきます。

なみあし剣道(地稽古)

2017-06-05

 最近、「左荷重の剣道」を推奨してきましたので、これまで紹介してきました「左荷重の剣道」が「なみあし流剣道」であると理解している剣士もおられるかもしれません。

 しかし、「左荷重の剣道」は、現代剣道(右かかりの剣道)から伝統的な技が発現する「なみあし剣道」への橋渡し的な剣道で「なみあし剣道」ではありません。

 「なみあし剣道」はカラダの操作法によって、さまざまな足さばきが自然にあらわれてきます。

 上の動画は先日(2017年6月2日)、本学剣道部での学生と私(木寺)の稽古を撮影したものです。

 足さばきにご注目いただきたいのですが、「右から」「左から」「左→右」「右→左→右」など、さまざまな足さばきを使っています。これらの足さばきは、ほぼ無意識に発現するようになっております。

 足にご注目いただかないと気付かないかもしれません。ご覧いただければ幸いです。

なみあし打突の原理(上肢・下肢の協調)

2017-06-13

 なみあし剣道での打突で最も大切なのは「上肢・下肢の協調」です。これは、なみあし剣道の基礎である「左荷重の剣道」においても同じです。「上下肢の協調」が崩れないようになることが上達の入り口です。上の動画をご覧ください。モデルは私(木寺)です。

 この打突法は「左荷重剣道」の「右⇒左」の打突としても紹介したのですが、この打突がなみあし剣道の原理です。右⇒左と歩み足で打突するのですが、正確な協調で打てる剣士は少数です。左足が前に出て打突しますが、決して踏みこみ足にはなりません。左足は前進時(前進している局面)に打突が完了するイメージです。

 この打突で、左足を右足の後方にとめれば「右足での打突」、右足を前進させずに左足を前進させれば「左足での打突」に変化します。様々な足さばきに変化するのです。面をつけなくていいですので何度もこの打突を稽古してみてください。連続で歩み足で面を打突してもかまいません。とにかく、この上肢と下肢の協調が無意識にできるようにすることが大切です。

なみあし流打突の原理

2019-01-23

 なみあし流の原型となる打突です。「右⇒左」と歩むように打突します。右足を前進させる局面では「左荷重」、左足を前進させる局面では「右荷重」になります。この足さばきは学生に教えたのではありません。「左荷重」の剣道を指導する過程で学生らが自然と取り入れました。

 上は構えから「右⇒左」と足を運んでいますが、下の動画は「左荷重」のまま「右足」を床に置いています。「右足」を床に置く場合でも「左荷重」を崩さないことが大切です。

 この打突で右足をあげれば「踏み込み足」に、そのままでも「右⇒左」の左足での打突に、応用で右を前進させなければ「左足」での打突に変容します。すべての打突に変化できる原型です。

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