2018年01月09日

シューズに走法を合わせる時代到来か?

ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%.jpg

 今年の箱根駅伝、青山学院大学の4連覇で幕を閉じましたが、陸上関係者の間ではシューズに大きな関心が集められていたそうです。多くの選手が初心者ランナー向けとも見える厚底のシューズを履いていたのだそうです。これまでは、長距離のトップ選手はソールが薄いシューズを履くことが一般的でした。

 関係者の中でその厚底シューズが話題になったのは、昨年10月の出雲駅伝。優勝した東海大学と4区までトップ争いをした東洋大学の主力選手たちが、こぞって厚底シューズを履いて走っていたのです。そのシューズはナイキの「ズームヴェイパーフライ4%」(写真)。

 このシューズは、昨年4月に世界屈指のメジャーレースであるボストンマラソンで3位に入る快挙を達成した大迫傑(おおさこ・すぐる、ナイキ・オレゴンプロジェクト)選手が愛用しています。さらに、大迫選手が現役日本人最速となる2時間7分19秒(日本歴代5位)で3位となった福岡国際マラソンでは、大迫を含む1位から4位に入った選手がすべて同シューズを履いていたことで一躍脚光を浴びることとなりました。

 実際に履いてみると、クッション性が高く、トラックでスパイクを履いているような感覚があり、一歩一歩の衝撃も少ないのでマラソンの後半の脚を残すことができるらしいのです。

 ナイキによると、「ズームヴェイパーフライ4%」は同社のマラソン用スピードシューズである「ズームストリーク6」との比較試験に基づき、ランニング効率を平均「4%」高めることを目標として開発されたといいます。何といってもその特徴はソールの厚さです。同シューズのソールはかかとの部分の厚みが3.3cm。ソール内部には、スプーンのような形状をしたカーボンファイバー(炭素繊維)製のプレートが埋め込まれ推進力を生み出しています。

 推進力を生み出す素材が埋め込まれていることから、一部では「ドーピングシューズ」「ジャンピングシューズ」と揶揄(やゆ)する声もあるようですが、国際陸上競技連盟の規定には違反していない新発想のシューズなのです。

 ただ、難点は価格と耐久性の低さ。2万5920円(税込)とランニングシューズとしてはかなり高額なのですが、一般的なランニングシューズの交換タイミングが500〜700kmとされる一方で、ズームヴェイパーフライ4%の耐用距離は160km程度といわれています。それでも注文が殺到、特殊な加工が必要なこのシューズは、製造できる工場が限られており、供給が追いついていない状態だといいます。

 さて、今回のシューズの課題を動作学の立場から少し考えてみました。スポーツ方法学の観点からは、道具が変わればそれにともなって技術が変容することは常識です。私の専門は剣道ですが「日本刀」「木刀」「竹刀」とその媒介(道具)が変化したことにより技術が変容してきました。

 動作を考察するときには、この道具と技術の関係をみることは必要不可欠なのですが、これまで走動作については常に技術が道具(シューズ)を先導していたと思われます。換言すれば、道具(シューズ)が主役に躍り出ることはなかったと思われます、シューズ開発の目的は技術を補うことといえるでしょう。しかし、今回の「ズームヴェイパーフライ4%」の出現により走動作の技術と道具の関係が主客転倒した感があります。 

 いよいよ走動作も道具(シューズ)に適合した技術が求められる時代に突入したのかもしれません。

一本歯(後歯)下駄